この世界自然遺産の島にも、温泉がいくつかあります。
その中でも最もダイナミックなのが、島の南端にある平内海中(ひらうちかいちゅう)温泉。磯の中から温泉が湧き出しており、潮が満ちてくると海中に没してしまうため、干潮の前後五時間(二時間という話もありますが、おそらく前後合わせて四、五時間なのではないでしょうか)くらいしか入浴できません。文字通り海中温泉です。遠めに見ると海との境目が分かりませんが、湯は結構熱く、硫黄臭も漂い、明らかに海水とは異なります。もちろん、毎日海中に没するので、海水は混じっていますが。
湯船の先は本物の海。ただ湯船から湯が溢れているからか、源泉がほかにもあるためか、湯船のすぐ側の海は暖かく、こうしたところにも浸かれます。押し寄せては引いていく波に身を委ねつつ、温泉にも浸かるというのも、なかなか貴重な体験です。
平内海中温泉には湯船がいくつかあります。入浴したのは9月の連休の昼間だったのですが、ほぼ独占状態。混浴で脱衣所もなく(公衆トイレは近くにあるようです)、水着着用は不可のため、女性には厳しいかもしれません。それだけに、夜の干潮時には芋洗い状態にあることもあるようです。湯船もあまり広くないので、度胸があれば昼がいいでしょう。景色もいいですし。
温泉の傍らには、湯ノ神様も祭られていました。温泉らしさを醸し出しています。平内海中温泉は400年以上の歴史があるそうで、祠も何らかの形で古くから存在するのでしょう。
平内海中温泉の案内板。無人ではありますが、地元の方が管理されています。
こちらは島北西部のいなか浜。南国らしい、とても美しい海です。屋久島の地形は険しく、磯や崖が多いため、このような砂浜はあまりありません。しかし、どこに行っても海は大変美しいです。
島南西部のタイドプール(潮溜まり)で泳ぐ、青い色が美しい天然の熱帯魚です。タイドプールは干潮時に岩などのくぼみに海水が取り残されたもので、こうした海の生き物を観察できます。タイドプールの見頃は干潮の三時間前くらいで、平内海中温泉までは8kmほどですので、タイドプールを見た後に温泉に浸かるといいでしょう。
屋久島で魚といえば、トビウオが有名です。実はトビウオの漁獲量は、屋久島が日本一なのです。宿泊すると、このようなトビウオをまるまる揚げた天ぷらなどを食べる機会がかなり多いでしょう(筆者は三泊して三回とも夕食に出たような記憶があります)。その他、アサヒガニなどもよく食事に出ます。
海中温泉からも比較的近い、島南部のモッチョム岳。非常に険しい山容が特徴です。屋久島は全体的に山がちな非常に険しい地形で、最高峰宮之浦岳は1936mで九州最高峰でもあり、西日本で二番目に高い山でもあります。島という面積の限られた場所にこうした高い山が存在するため、非常に険しい地形になり、また海からの湿った風が山にぶつかるため、大変雨の多い気候になります。ただし、晴れていても、周囲の山に阻まれて、宮之浦岳を島の平地から見ることは出来ません。
屋久島の険しい地形と多雨の気候を象徴するのが、島に数多くある滝の存在。こちらはモッチョム岳にも近い千尋(せんぴろ)の滝です。高さ約200mの巨大な一枚岩のV字谷を落差約60mの滝が流れ落ちるダイナミックな眺めが印象的です。この他にも見所となる滝が島内各地にあります。
それから、屋久島と言えばやはり屋久杉。樹齢1000年の巨大な杉の古木を「屋久杉」というのですが、山中にはそれがいくつもあります。写真はウィルソン株。樹齢約2000年、幹周13.8mもある巨大な切り株です。内部は10畳もの広さの空洞があり、人が容易に入れます。切られたのは豊臣秀吉の大坂城築城の際だとか。株からは若木が生えていますが、それでも樹齢300年はあります。
そしてこれが、屋久島のシンボル、縄文杉です。樹高30m、幹周16.1mの世界最大の杉。樹齢は約3000~7200年とはっきりしていません。いずれにしても世界最古級の樹木です。保護の為、木の周りには立ち入り出来ないのですが、それでも相当の迫力です。もはや生物なのか岩石なのか分からない、というのが筆者の印象でした。大き過ぎて写真に上手く納まらないので、動画も撮影しました(それほどいい動画でもないですが)。
しかし、注意すべきは、縄文杉までは往復約8~10時間の登山を要するということです。
装備や健康を整えておくのは当然として、
日帰りで見る場合、かなり朝早くから登り始めなければなりません。
もっとも、日帰りで見に行くのが一般的なので、
屋久島の宿ではほとんどのところで早朝出発に対応しています。
装備を貸し出してくれる店舗も数多くあります。
なお、縄文杉への登山は無理、もしくは途中まで行ったものの何らかの事情により断念したが、屋久杉は見たい、という人には、「ヤクスギランド」がお勧めです。テーマパークのような名前ですが、遊歩道などはあるものの、本物の山の中です。車で屋久杉を見に行けるただ一つの場所で、少し離れたところには樹齢約3000年の紀元杉もあります(こちらも車で見に行けます)。
さて、縄文杉への登山時間を考えると、交通の便の関係もあって、
屋久島への旅行は最低2泊3日は必要になります。
すると、縄文杉登山には丸一日を要しますが、
初日もしくは最終日には、別の島内観光をする余裕が出てきます。
その際、平内海中温泉に浸かってみるのも良いのではないでしょうか。
ただし、干潮時間を調べておくのをお忘れなく。
ちなみにどうしてもこの湯に入るのはためらわれる、という方には、
建物の中にある温泉が近隣にあります。
平内海中温泉
▼所在地:鹿児島県熊毛郡屋久島町平内
▼泉質:硫黄泉(低張性アルカリ性高温泉)
▼ph:9.2
▼泉温:46.4度
▼温泉の利用形態:源泉掛け流し
▼営業時間:干潮の前後2~5時間前後のみ入浴可能
▼休業日:なし
▼入浴料:寸志(100円程度)
▼問い合わせ先:屋久島町商工観光課 0997-43-5900
http://www.yakushima-town.jp/
平内海中温泉の地図はこちら。
大きな地図で見る
コメント